自動車のライトについて
モータージャーナリストでカーレーサーの清水和夫氏は、私の最もお気に入りのライターである。その広い見識と鋭い意見はとても参考になるし、特に安全性への提言には好感を持っている。時に月刊誌NAVIでの、乗車人数の差や路面の条件の違うクルマの挙動のおける実験記事は、実際の使用状況にも沿っていて極めて参考になる。そしてそういう調査は、今までの自動車雑誌の記事には全く見あたらなかったものだ。自身のBlogをお持ちである清水和夫氏は、世界各地にメーカーによる試乗会にも参加され、更にレーサー(スバル・インプレッサで耐久レース)としても活躍中である。
5/11付けの氏のBlogで、安全性に関しての提言がなされている。日中でのヘッドライト点灯による事故発生の低下を目指すというものだ。
私はこの意見に関して半ば反対である。いや正確に言えば、総論賛成、各論反対<汗。まずヘッドライト点灯に関して、周囲の歩行者や車両は、確実にそのクルマが走行中であることが認識される。そして注意が払われるであろう事は容易に想像できるし、その結果事故発生率も低下することも推測できる。
氏は、夕暮れ時における日本でのライト点灯がなされないことを、マナーが悪いと断罪したが、それは早計であると思う。実際に日本の夕刻の市街地を走行すればその理由は理解できよう。なぜなら、キセノンランプで光量が増した昨今のクルマの中には、光軸調整が適正でなく対向車として極めて迷惑に感じることが多いのだ。光量が多くなったことで、返って対向車を幻惑し事故の危険性を増しているとしか思えないことを多く経験する。
我が家には二台のクルマがあるが、私の三菱車は部品の出来が悪いらしく(前のもそうだった!)、車内に光軸調整機構が付いているのに一番上のポジションでもかなり低く感じられる。ところが、ヘッドランプの調整範囲が狭すぎるため思った位置に光軸調整が出来ず、特に高速道路走行時に不満に思うことも多い。その反面、ワイフが主に使っているトヨタ車は、そもそもSUVなためランプの取り付け位置が高い上、対向車が気の毒なほど光軸が上向きである。以前に所有したことのある日産車は、プロジェクターランプは悲惨だった。暗いし、光軸が低くさらに照射範囲も狭かった。そう言う意味で考えると、現在販売の好調な会社のクルマのライトほど、対向車に対して傍若無人な振る舞いをしているかもしれないと、あえて偏見で主張したい。
以前からのバイクや、最近タクシーや宅配便トラックの昼間点灯はとても好ましいと思うし、自家用車にもその流れをくみ入れて欲しいとも思うが、その前に自己中心的なライト調整自体にまず規制を与えるべきであろう。
更に清水氏はスモール点灯が不適切だと言うが、逆にこの日本ではライト点灯の前のクルマ走行時の証としてのスモール点灯を私は提案したい。確かに私の三菱車も、以前のはそうではなかったがいつの間にか常時メーターに照明点灯になり、自車のライト点灯との識別が付きにくくなっている。そのためでもなかろうが、私の家の近くにあるJR千葉駅前のトンネルでは、ほとんどのクルマが点灯せずに通過走行していると言う危険な事実を私は訴えたい。そう言う意味では、メーカーのエンジニアが全く勘違いしているのだろう。トヨタのオプティロン・メーターに類似する照明を使ったメーターにも、自車の点灯を呼びかけるもっと大きく判別が容易なデザインを忘れすぎている様な気がしてならない。ではランプのSWをAUTO(我が家のトヨタ車の場合)にしておけばよい、という意見もあろうが、我が家の場合駐車場が信号待ちのクルマに向いているため、結局SWをいじる必要があるため、手動になるのだ。
話がずれるが、現在私のクルマにはオートエアコンが装備されているが、何故か外気温の表示が省かれている。冬場や夏場の走行時、クルマの外界の情報は極めて重要なはずなのだ。
確かに日本の交通安全性に関しては、全く後進というより手抜きと言わざるを得ないと思うことが多い。それはライト点灯のことからも、良いことが実行できない環境とそれを推奨できない法と現実、そしてそれを指示しなくてはならない生産者の無知によることが判る。少なくとも、自分の車が走行している様子を、定期点検や車検の際に実体験し客観的に管理できる様になりたいと思う。また、運転席や助手席のフィルムや、ナンバープレートに装着しているオービス対策のカバーの取り締まりを、少なくとも駐車違反やスピード取り締まりやパトロールの際にさえ行えない警察に、ライト光軸の指導など期待も出来ない。だからこそ、利益を上げているメーカーが率先して高級志向の店舗を展開する前に、安全対策における積極的な提案をするように努力してもらいたいのだ。